リコちゃんとピンくんと双極性障害

双極性障害の夫婦のお話

双極性障害の理解が浅かった頃の大失敗

あらすじ

双極性障害鬱状態躁状態を繰り返す病気ですが

知識が無いと、鬱状態ばかりに気を取られがちになります。

躁状態というものを甘くみたばかりに起きた事件の話です。

 

 

 

 

元々、リコちゃんはうつ病の診断でした。

 

ピンくんはリコちゃんの

気分の落ち込みに関する面だけを注目していました。

 

ピンくんはうつ病について調べる中で

うつ病に対して「甘えているだけ」と考えている人が一定数いることを知りました。

自分はそうした考えを自分は持たないようにしようと、考えていました。

 

うつ病の理解が得られない先が、例えば職場など

最悪切り捨てられる場所であればまだしも(といっても、それも辛い選択のはずですが)

家族のような身近な存在からも理解されない場合

その苦しさは想像に難くありません。

 

リコちゃんにとってのピンくんが

理解の無い存在にならないようにしようと努力しました。

 

リコちゃんの家族や友達なども

気分の落ち込みに配慮してくれる人が大勢いました。

 

そのため、ピンくんはリコちゃんに対して

極端に病人であるといった扱いをせずに暮らしていられました。

 

無理はさせないけれども

何かに興味を持ったりやりたいことがあれば

それを応援したいというスタンスでいました。

 

ある日、リコちゃんは

それまで不定期で通っていたバイトが定期的に行けるようになりました。

ピンくんは、リコちゃんの鬱が改善されてきたような印象を持ちました。

 

続いてリコちゃんは

今まで迷惑をかけてきた分、これからはもっとピンくんを支えたいと言いました。

そして、日商簿記のテキストを2冊買ってきました。

ピンくんは少し驚きつつも

リコちゃんは元々地元で銀行員をしていた経歴があったので

リコちゃんにとっては具体的な目標なのだと思いました。

 

もっと元気になったリコちゃんは投資を始めました

簿記の勉強をしたことで視野が広くなってきたのだと感じました。

リコちゃんの親戚に投資に詳しいコジマさんという方がいて

コジマさんからレクチャーを受けつつやってみることになりました。

 

コジマさんとはピンくんも話したことがあり

積立NISAなど、比較的堅実な投資を教えてくれたことがありました。

つまり、少額での投資を相談できる相手がいる状態で行うという状況です。

そのため、ピンくんは安心しきっていました。

 

その頃のリコちゃんは

元気が少し収まったり、また復活したりしていました。

鬱が治る兆候が出つつも、まだ波があるのだと考え

ピンくんはまだまだ長い目でみようと思いました。

 

割と長い時間で、投資では3万円の儲けが出ました。

ピンくんは、リコちゃんをさらに信頼しました。

 

変動が大きくない投資にしているという話だったので

それなら元気がないタイミングがあっても続けられると思いました。

 

何より、バイトは出かける必要がありますが、投資なら家でできます

バイト先に急な休みで迷惑をかけることなどもなく、リコちゃん向きだと考えました。

 

 

 

 

そして、ある日突然200万の損失が出ました。

 

 

ピンくんは目の前が真っ暗になりました。

無名の海外の妙な投資先でした。

コジマさんと一緒に始めたらしいですが

コジマさんは早い段階で引き上げていました。

 

金額以上にピンくんを追い詰めたのがリコちゃんの態度

泣きながら話されましたが、言い出すのが辛かったなどのセリフが多く

リコちゃんの感情について大きく説明させられた気がしました。

 

うつ病が良い傾向になるというのは

パートナーから見て喜ばしく、未来を明るく照らす一筋の光です。

そして、元気が出ている時のリコちゃんこそが

本当のリコちゃんの人格だと思いたかったために

ピンくんは事前の確認を怠ってしまったのです。

 

好循環を感じる一瞬の隙を突かれた気がしました。

後悔しても悔やみきれない損失です。

 

その頃にはクリニックを変更したこともあり

リコちゃんの病名は双極性障害の診断に代わっていました。

 

 

 

「自分だってリコちゃんが投資をすることに賛成していたのだから

2人の責任だよ」

損失を報告された瞬間から

ようやく絞り出した答えでした。

 

 

 

このことはリコちゃんの実家へ伝わり

リコちゃんの両親が、毎月補填してくれています。

 

リコちゃんは少し落ち着き

これほどまで極端なことはしなくなりました。

 

簿記のテキストは2度と開かれていません。

ですが、部屋を掃除しているときに捨てることもしません。

 

ピンくんは、報告された瞬間こそ冷静でしたが

この気持ちをずっと消化できずにいます。

 

何かトリガーを弾かれるたびに

投資の失敗を思い出してしまいます。

 

躁状態のリコちゃんが突然、ピンくんの仕事(エンジニア)は簡単だから

私もなろうかなあーと無邪気に言い出した時

 

鬱状態のリコちゃんが突然極端に体調を悪くして

コジマさんがあの時変な投資先を教えてきたせいだと言い出した時

 

朝から掃除や洗濯を終わらせ、いざ自分の時間というときに

リコちゃんの500円引きのクーポンを使う買い物の内容が決まらずに

2時間以上の会話に付き合わされた時

 

その買い物のタイミングではやる気満々に料理すると言っていたはずが

結局買った野菜や肉を腐らせた時

 

 

 

 

次のカウンセリングでは、この気持ちが少しでも消化できるでしょうか

 

ピンくんの耐え忍ぶ日々は続きます。